カリキュラム
学位プログラムの内容
本プログラムでは、「実学(実践科学)」の代表分野である農学および工学の融合基盤を備え、さらに、イノベーション創出力?国際展開力?人間力を具備したリーダーを養成することを目的としている。リーダーはそれぞれの専門分野における先端的研究開発の経験が必須であり、最先端研究開発に対する成果ならびにその達成方法の習得度に対する評価に基づく博士論文審査は不可欠である。しかし、これはリーダー養成の必要条件に過ぎず、十分条件とはならない。すなわち、リーダーは、多様な科学技術領域を理解し、判断?評価する能力を備えることが求められる。さらに、社会実現力や国際展開力を養成するには、産官学連携や海外連携を活用した実践型教育が必須である。
本課題で実施する学位プログラムは、従来の博士前期課程(2年)と博士後期課程(3年)を貫いた、5年一貫教育システムである。従来の博士前期課程の1年を“PreD”、2年生を“D0”と呼び、博士後期課程をD1~D3とする(右図)。PreD~D3の5年一貫教育とすることにより、従来の2年と3年の間の区切りをシームレスとして、戦略的な実践型教育が可能となる。まず、入学後の6か月間は、学生全員が“キャリア開発プログラム”を履修して、自己形成の目標設定とその実現に向けた方法を認識する期間とする。この期間に、複数のメンター(企業メンター、教員メンター)から指導を受けることが可能であり、キャリア形成の方向性を自己開発する。また、この6ヶ月の間に基盤科目と基礎専門科目を履修する。入学6ヶ月以降は、イノベーション科目、国際科目についてコースワークを構築して履修し、研究室ローテーションにより3名の教員から研究指導を受ける。また、人間力強化に向けて、人文社会系や語学表現に力点を置いた基盤科目を設定している。さらに、社会交流科目によって、企業に出向く実践型インターンシップや海外留学(長期海外派遣)を経験するシステムとし、実践力を具備したリーダー養成を可能とする。学生の主体性を確保するために、学生に自分の裁量で使える研究費を与え、自らの意思と判断で学会への参加や調査を行うことを可能にする等の仕組みも設定する。
専門分野の枠を超えたコースワーク(基礎専門科目?イノベーション科目?国際科目?基盤科目?社会交流科目)と履修体系
本課題の実施は、全学的組織として設置している“実践型研究人材養成拠点”に所属する教員により、農学系と工学系の専門分野の枠を超えた融合教育を実施する。分野を超えたリーダー養成の目的を明確化し、コースワークを設定して、基礎専門科目、イノベーション科目、国際科目を効率的かつ系統的に履修できる体制とする。
基礎専門科目では、農学系の学生は工学系の科目を優先的に履修し、一方、工学系の学生は農学系の科目を優先的に履修するように指導する。これにより、食料生産の専門を目指す学生が化学肥料製産の低炭素化プロセスを理解し、電子?デバイス開発を目指す学生が物質の土壌や生態系への影響、地球環境を理解するように指導する。
イノベーション科目は、イノベーション実践教育プログラムにより実践教育に力点を置き、ニーズの把握?価値想像力?チーム形成力?組織間連携力を養成し、科学技術の各論をイノベーション創出につなげる教育を実施する。本学のイノベーション機構では、すでにイノベーション実践プログラムを実施しており、そのノウハウと実績を生かして、さらに強化する。
国際科目として、英語プレゼンテーション科目、英語論文科目、英語環境による定期的コロキウム、国際交流ワークショップを設定する。英語については、TOEICまたはTOEFLの合格最低点を設定する。海外留学で経験した研究は博士論文に反映させることを必須とし、海外における各種経験と専門研究の推進の双方についてグローバル化を推進する。
基盤科目は、人間力の養成?強化を目的として設定する。日本語表現、デザイン、法律、経済、歴史、さらには説得力、リスク管理、交渉力、持久力などの養成を推進するもので、人文社会系や言語表現に力点を置き、学年の枠を超えて履修可能として幅広い人間力を備えたリーダー養成に活用する。
社会交流科目として、実践型インターンシップとして企業における活動を経験すると共に、教員の指導の下、企業との共同研究に参画する。また、海外留学として、先端的研究を実践している海外機関?大学に長期派遣する。派遣期間は6ヶ月~1年を目安とする。当該科目は、企業インターンあるいは海外留学を選択することを可能とし、希望する学生には双方の履修も可能な体制とする。
複数専攻制、研究室ローテーションなどの工夫
学生は、農学系と工学系を横断する“実践型人材養成拠点”に所属する教員の指導を受ける体制とし、複数の専攻から選出された教員から研究指導を受ける。特に、PreDからD0の1年半は、前ページ図の、研究指導A~Cに示すように、3名の教員から研究指導を受ける。D1に進級する時点で、その3指導教員から1名を確定し、博士論文作成までにわたる3年間の主たる研究指導を受ける(図中の研究指導Aに相当)。図の研究指導Aを実施する教員が主指導教員となり、研究指導Bおよび研究指導Cの2名が副指導教員となり、学位取得までの研究指導を行なう。このように、異なる分野の3名の教員から研究指導を受けることを可能とするシステムとする。この3名の指導教員の指導を受けるプロセスにおいて、研究室ローテーションを実施することになる。また、研究室間の融合研究も推進し、研究室ローテーションと研究推進に有効活用する仕組みを整備する。
知の基盤を包括的に評価するQualifying Examinationなどの質保証
本プログラムにおける統一成績評価システムとして、各科目において、レダーチャート型の成績評価システム(Rader Chart Qualify: RCQ)を導入し、俯瞰的な総合学力の向上を計る。Qualifying Exam (Queam)では、5年一貫教育プログラムの3年目(博士後期課程1年に相当)に進学する直前の学年(博士前期課程2年に相当)に2回の絶対的回数制限を設けて実施する。これらRCQによる成績と内申評価とを合わせて最終的な進学可否の基準とする。
学生が独創的に行う研究の計画、活動及びその研究指導における工夫
本プログラムでは、学内研究?海外留学?企業インターンシップにおいて、学生によるプロジェクト立案を導入し、学生自身による①研究計画、②研究資金計画、③研究活動の実施、③成果発表、について独自の発想を尊重して実施する機会を設定する。また、教育への参加を推進し、④教育補助(スーパーTA、スーパーRA)、⑤教育指導実績を評価項目として導入する。このように学生独自の発想による研究を可能とし、教育経験を指導対象に盛り込むことにより、イノベーションリーダーに必須な自己創造力につながる、立案力、実践力、指導力を強化する。
リーダーとなるに相応しい資質能力を保証する学位審査体制の工夫
本プログラムでは、学位審査は5名以上の教員ならびに外部評価委員によって実施し、客観的な視点から教育研究目標の達成度を厳格に評価できる体制とする。上記に示したコースワークの科目群を履修すると共に博士論文の作成を行う。特に、実践を伴う科目ならびに博士論文の作成に至るプロセスの評価においては、①独創性、②発展性、③実践性を重視した評価を行ない、最終審査とする。
グローバルに活躍するリーダーを養成する観点からの工夫
コースワークの国際科目として、英語プレゼンテーション能力の強化に力点を置き、定期的に英語環境によるコロキウムを開催し、英語による発表や議論の機会を数多く設定する。社会交流科目の海外留学として、海外の最先端の研究大学や国際機関に学生を6ヶ月~1年海外派遣する。海外における研究会議、国際会議への参加を定量的な成績評価として行い、それらへの参加を促進する。