遠心場向け三次元6自由度振動台を開発 -地震による地盤と建物倒壊メカニズムの解明に期待-
遠心場向け三次元6自由度振動台を開発
-地震による地盤と建物倒壊メカニズムの解明に期待-
国立大学法人新万博体育_万博体育官网-【官方授权牌照】大学院工学研究院先端機械システム部門の田川泰敬教授、同大学大学院工学府機械システム専攻の細田遼氏(研究当時、博士後期課程在籍およびソルーション株式会社所属)、松田裕喜氏(博士前期課程2020年3月修了)と松本健斗氏(博士前期課程2022年3月修了)、一般財団法人 電力中央研究所の岡田哲実副研究参事と中村邦彦主任研究員、独立行政法人国立高等専門学校機構木更津工業高等専門学校の岡本峰基教授、ソルーション株式会社の大村剛氏は世界で初めて遠心載荷装置に搭載可能な三次元振動台を開発しました。この振動台は小型ながら高重力下での上下、左右、前後の並進3方向および各軸回りの回転3方向の計6自由度の振動を再現可能です。この成果により地盤および建物に関する縮小模型を対象とした実地震動と同じ三次元加振実験が可能となり、地震による被害のメカニズムの解明が期待されます。
本研究成果は、Structural Control and Health Monitoring(2024年11月14日付)に掲載されました。
論文タイトル:Development of 6 Degrees of Freedom Parallel-Link Shaking Table for Three-Dimensional Movement on Centrifugal Loading Device
URL:https://doi.org/10.1155/2024/1231823
背景
地震による被害のメカニズム解明のため、土木工学分野では縮小模型による加振実験が行われてきました。ある地盤の地震に対する応答を縮小模型で再現する場合、相似則(実大スケールを縮小して同様の現象を再現するための規則)を利用するために、高重力下において高周波大振幅にスケーリングして加振する必要があります(図1)。このとき、遠心力によって高重力を再現します。これにより100G重力場であれば、100mの実地盤を1 mの縮小地盤模型で再現することが可能となるため、実験にかかる費用、労力を大きく軽減することができます。具体的には、図2に示すような遠心載荷装置(1)によって遠心力を模型に加えます。遠心載荷装置は主軸、アームと遠心バケットから構成されます。主軸を回転軸としてアームとバケットが回転します。回転すると遠心力によってバケットが振り上がり、バケット底面方向が模型にとっての重力方向になります。
実地震が三次元的な現象であることから、高重力下における三次元加振実験が求められてきましたが、高重力場において三次元動作可能な振動台は実装されていませんでした。実装のためには、高重力に耐え、高周波?大加速度振動を発生させられること、多自由度動作が可能であることが必要ですが、いずれも機械の大型化を招くため、遠心載荷装置のスペースと設置質量の制限により実現が困難でした。このことから実際に運用されている遠心場向け振動台は一次元または二次元動作可能なもののみであり、再現できる地震も一次元または二次元に限定されていました。
研究体制
本研究は、国立大学法人新万博体育_万博体育官网-【官方授权牌照】大学院工学研究院先端機械システム部門の田川泰敬教授および同大学大学院工学府機械システム専攻の細田遼氏、松田裕喜氏と松本健斗氏、電力中央研究所の岡田哲実氏、中村邦彦氏、木更津工業高等専門学校の岡本峰基教授、ソルーション株式会社の大村剛氏らが共同で実施しました。
研究成果
本研究では高重力場という特殊な環境にて適切に動作するよう、後述される3つの着想を取り入れることにより遠心場向け三次元6自由度振動台(図3、4)を製作し、実際に遠心50G場(2)において加振動作を行えることを確認しました。
第一の着想として、遠心場向けの三次元動作機構としてスチュワートプラットフォーム機構(3)を採用しました(図5)。一般的な三次元動作機構は反力フレームやガイド機構が面積や質量の大半を占めるため遠心場には適しておりません。スチュワートプラットフォーム機構はガイド機構(4)によって運動を抑制することが不要であることから、他の振動台機構においてはガイドに割かれる分の重量をアクチュエータや供試体に割り当てることができます。
第二の着想として、加振部にかかる高重力に対抗するために受動的機械要素を設けました。一般に鉛直動作可能な高重力場向けの機械は、可動部にかかる重力と釣り合う力を常に発揮した上で動作に必要な力を発揮する必要があります。例えば50Gの重力場で30Gの加振加速度を発揮させる場合には合わせて80G ×搭載質量の力が必要であることを意味し、鉛直アクチュエータの大型化を招きます。本研究では受動的機械要素に重力と釣り合う力を発揮させ、アクチュエータの出力は加振のみに使う機構を提案しました。具体的にはエアばねを、テーブル下部のスペースにテーブルを受圧面として設置し、空気圧によって重力を支えました(図6)。
第三の着想として、高周波振動向け球面軸受を開発しました。スチュワートプラットフォーム機構のアクチュエータ両端には2軸以上で回転できる軸受が必要です。軸受部の遊びによるガタがあるとアクチュエータの加振力がテーブルにため、特に高周波振動用途においては与圧機構が求められます。与圧機構と、遠心振動台向けの大負荷容量を両立するために球面軸受機構を開発し検証しました(図7)。
開発した振動台は実際に遠心載荷装置に搭載し、最大で50Gまでの高重力下で動作確認を行いました。単純な振動であり定量的な評価に使用されるsin波、およびスケーリングされた兵庫県南部地震(5)の再現波形で加振できることを確認しました(図8)。Result(赤線)が振動台において発生した加速度、Reference(青破線)が再現目標となるスケーリングされた波形を示します。形状や振幅が概ね一致しており、遠心場向けの高周波大加速度波形を正確に再現できました。
研究体制
今回開発した遠心場向け三次元6自由度振動台は、電力中央研究所において実際に運用され、三次元の地震が地盤に及ぼす影響の解明に役立てられていきます。また当該機構の制御上の特性についても検討を行い、次世代振動台の開発に役立てられることが期待されます。
用語解説
(1)遠心載荷装置
遠心力によって高重力場を模擬する試験装置です。
(2)G
地球地表においてかかる重力を1Gとした単位です。50Gならば地球の50倍です。
(3)スチュワートプラットフォーム
1950年代に発明されたパラレルリンク機構の一種です。冗長なアクチュエータが無く、6台のアクチュエータ によって効果器が6自由度動作できます。
(4)ガイド機構
リニアガイドや平行リンクなどの受動的機械要素によって不要な回転や並進運動を抑制する機構です。
(5)兵庫県南部地震
阪神淡路大震災を引き起こした地震です。
◆研究に関する問い合わせ◆
新万博体育_万博体育官网-【官方授权牌照】大学院工学研究院
先端機械システム部門 教授
田川 泰敬(たがわ やすたか)
E-mail:tagawa(ここに@を入れてください)cc.wxanhx.com
◆報道に関する問い合わせ◆
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