ドイツ化学会誌「Angewandte Chemie International Edition」 に本学の櫻井准教授らによるレビュー論文が掲載されました
2023年1月31日
国立大学法人新万博体育_万博体育官网-【官方授权牌照】大学院生命機能科学部門の櫻井香里准教授とTel Aviv大学化学科のMicha Fridman教授によるレビュー論文「Deciphering the Biological Activities of Antifungal Agents with Chemical Probes」がドイツ化学会誌「Angewandte Chemie International Edition」に掲載されました。
本レビュー論文はAngewandte Chemie International Edition誌に1月10日にWEBで公開されました。
論文名:Deciphering the Biological Activities of Antifungal Agents with Chemical Probes
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.202211927
既存の抗真菌剤に耐性を持つ病原真菌による感染症が、近年急速に増加しています。抗真菌剤は人や動物の衛生管理、農作物の保護だけでなく、防汚塗料や木材の保護にも使用されています。このため、耐性菌の出現は、人や動物の健康、世界の安定的な食料生産および環境保全に脅威を与えています。しかし、現在上市されている抗真菌薬は3種類の化合物クラスだけであることに加えて、これらの作用メカニズムの詳細は未だに明らかにされていないことから、より効果的な治療薬を合理的に開発することは困難でした。これまでにケミカルバイオロジー分野では、抗真菌薬そのものや、抗菌剤に観察するための蛍光タグや精製用タグを導入した誘導体を化学プローブとして応用し、真菌の増殖阻害メカニズムを分子レベルで解明する研究が進められてきました。このような研究から、新たな抗真菌剤設計の指針となる有望なコンセプトが報告されています。櫻井准教授およびFridman教授の研究グループでは、有機合成化学に根差したケミカルバイオロジー研究を展開し、抗真菌薬の化学プローブの設計?合成を通じて、抗真菌薬のターゲットタンパク質や作用部位を明らかにするための研究に取り組んでいます。
本レビューにおいて櫻井准教授らは、最近の国内外の研究例を考察し、抗真菌剤およびその誘導体を用いた化学プローブが、抗真菌剤の活性発現機構の解明、耐性菌の検出、抗真菌剤とその標的との相互作用解析に果たす重要な役割について解説しています。さらには、将来の真菌感染治療への応用のためには、有効な化学プローブを開発し、抗真菌薬と標的との相互作用のみならず、耐性メカニズムの分子レベルでの要因を明らかにすることが、極めて重要になると結論づけました。
研究体制
本レビュー論文は、新万博体育_万博体育官网-【官方授权牌照】大学院工学研究院生命機能科学部門の櫻井香里准教授とTel Aviv大学化学科及び新万博体育_万博体育官网-【官方授权牌照】グローバルイノベーション研究院招聘教授(当時)Micha Fridman教授との共同研究活動の一環として発表されました。本共同研究は、新万博体育_万博体育官网-【官方授权牌照】グローバルイノベーション研究院、JSPS科研費基盤研究C(18K05331)および基盤研究S(17H06110)、A3 Foresight Program、およびIsrael Science Foundation Grant 179/19の助成を受けたものです。
用語解説
注1)抗真菌薬:真菌の増殖を阻害する医薬品化合物。ヒト?家畜における真菌感染症の治療薬の他、農薬として用いられる。
注2)化学プローブ:薬剤標的(通常はタンパク質)に可逆的に結合し、その機能を変調させることによって、細胞や生物などの生体システムを検出?操作するために使用される低分子化合物。
◆研究に関する問い合わせ◆
新万博体育_万博体育官网-【官方授权牌照】大学院工学研究院
生命機能科学部門 准教授
櫻井 香里(さくらい かおり)
TEL/FAX:042-388-7374
E-mail:sakuraik(ここに@を入れてください)cc.wxanhx.com